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デミテルは今日もダメだった【58】

なんということよ……

月の精霊……まさかあれほどの化け物とは………

一人でどうにかなるものではござらんか……


………いや。否だ。


木々を器用に飛び抜けるニンジャは、ふと一本の木のてっぺんで立ち止まった。


あれを私一人で仕留めれば………私の株は上がる。

………もう、『邪魔者』にはされぬ。

デミテルと精霊の首。私が貰う。

空が夕焼けに少しずつ近付く中で、ニンジャの黒い目が、赤く染まった。


第五十八復讐教訓「世界で一番最初に『~たん』て呼称考えたの誰なんだろ」


「ちょっと虫。一体いつまで待たせる気よ。もう日が暮れてきたわよ。」
「うるさいなぁちょっと待ってろよインコ。」
「インコじゃないわよ。ジャミルよ。」
「虫じゃないやい!アルテミスだい!」
「わかったわよ。ウィルスミス。」
「アルテミスだっつーの!?中途半端にしか合ってないだろそれ!?精霊ウィルスミスってどんなファンタジーだよ!!精霊の配役だけお金かけすぎだろ!?」

十二星座の塔の中は、苔がこびりついた外装と違って随分と綺麗だった。塔を形
作る石は白に近い灰色で、中もそれだった。床や壁の至る所に星座の生き物を描
いた絵が、剥げることなく、美しく内装を飾っていた。

さらに、塔内は音楽がずっとかかっていた。

「『音楽は全ての芸術が嫉妬する』んだってさ。なんかよくわかんないけど、音楽より優れた芸術は無いらしいよ。昔の偉い人いわく。」
「ふぅん。確かに、夜中に家の塀に落書きされるのと、夜中に家の隣から騒音流されるのは、騒音の方が精神的にウザイわよね。」
「そういう話じゃないよ」


ジャミルとアルテミスは十階にいた。アルテミスの部屋はまるでおもちゃ箱の中のような小さい家具が所狭し置かれていた。
普通の人間が見ればおもちゃに見えたかもしれないが、ジャミルにとってはちょうど良い大きさで、まるで人型に戻ったような錯覚を感じた。

アルテミスは、先程からずっと棚をゴソゴソいじっては、様々なモノを出していた。
金色のモールの束、色紙の束、のり、はさみ、セロハンテープ……

「のりとハサミがあればなんでもできるぜ!!」
「ええ。できるわね。ゴミの山が。」
「やなこと言うなよ。」
「で、結局なによこれは?パーティーでもすんの?」
「ご明答!」

アルテミスは嬉しそうに、自分と同じくらいの大きさの色紙の束を持ち上げた。

「実は!今日はルナお姉ちゃんと僕が出会ってうん千年の記念日なんだぁ♪そのパーティーをやるのさ!」
「うわぁ。テンションうざい。」
「お前さっきからクチバシ開く度にイライラするな。」
「悪いけどアタシは文化祭とか体育祭でテンション上がってる奴ら見てると『くたばれ!』って思うタチなのよ悪いけど。」

ジャミルは大欠伸しながら退屈そうに言った。

「んなことより、アタシの体はどうしたら戻してくれるわけ?まさかパーティの料理の材料になれなんて言わないわよね?」
「インコなんて食うわけないだろ。そんな奴聞いたことないよ」
「アタシの周りはそんなんばっかだけど。」
「ほらっ。」
「!」

アルテミスは棚から何かを取り出すと、ジャミルにポイッと投げた。ジャミルより一回り程大きい瓶が、彼女の前にコトンと音を立てて落ちた。

中には、紫色の液体が揺れていた。ジャミルは足で瓶をつついた。

「ルーンボトルじゃないの。これどうすんのよ。」
「飲むんだよ。」
「ああ……いやちょっと待てや。」

ああなるほど、と言いかけてジャミルは急いで否定した。

「飲めって……これはアイテムにぶっかけて変化させる奴よ?何普通にファンタグレープ感覚で飲ませようとしてんのよ。まさかこれで戻れるなんて言わないわよね?」
「そのまさかだよ。早く飲みなよ。飲んで戻ったらパーティーの準備手伝ってもらう。それが条件だ。」
「………。」

ジャミルは、眼前にある瓶に映る自分の鳥のような顔を見つめた。つーか鳥だった。


これを飲めば元に………こんな簡単な話なわけ?二年半近くもやっといて?これで?マジで?

うーん………


迷うジャミルの脳裏を、

クソ憎ったらしい甘ッタレハーフエルフのほくそ笑む顔が過ぎった。

『黙れインコ。煮込むぞ。』

……あのアホンダラの鼻を明かす為には………


……うおりゃああああ!!


「………あれ?今のはルナお姉ちゃんのレーザー!?」

アルテミスが窓を見て叫んだが、ジャミルはルーンボトルをグビングビン一気飲みしていた為気付いていなかった。
なんだか、濃いカントリーマァムみたいな味だった。しかし、鉄臭くもあった。


―――――――――――――――

ここはどこだろうか。周り一面

黄土色だ。気持ち悪ッ!!


デミテルは辺り一面黄土色の世界で寝ていた。


なんで黄土色なんだよ。普通真っ暗とかそんなんだろうが。ちっともミステリー性が感じられん。

「デミテル様ぁ。」
「なんだリミィ。」

ごく普通に、バンシー族のリミィがデミテルの前にフワフワと浮いていた。長い水色の髪を揺らして。

「ハッピーバースデイトゥーユー♪」
「ああ。今日は私の誕生日だったか。」
「ハッピーバースデイディアなーまこー」
「ってなまこの誕生日!?というかまだ持ってたのかなまこ!!」

リミィはいつぞやのなまこをブンブン振り回して歌っていた。

「聞いてデミテル様ぁ!なまこくんのお父さんとお母さん、仲直りしたってぇ!」
「そうか。よかったな。」
「でもぉ、今度はまた別のお父さんが出てきたんだってぇ。『俺がお前の真の父親だ!!』って言ってぇ。」
「誕生日に災難ななまこだな。」「デミテルさんデミテルさん。」

フトソンが、ムーンウォークで軽快にこちらにやってきた。

「気持ち悪ッ!!」
「いやちょっと待つんだな!ムーンウォークしてるだけで気持ち悪いってどういうことなんだな!!」
「何がムーンウォークだ。ムーンウォークできるほど、足長く無いだろうが。それはただの後ろ歩きだ。」
「デミテルさん聞いてください!」

リリスがおたまでバジリスクをすくいながらこちらに走ってきた。今晩のオカズはバジリスクの叩きらしい。

「あ、兄が結婚したって!」
「そうか。よかったな。誰とだ。」
「アーガス君と!!」
「よかったな。お似合いじゃないか。」
「適当なこと言わないでください!あなた兄のこと何も知らないじゃないですか!!ちなみにアーガス君ってどんな人なんですか!」
「好きな女の子の靴下を頭に被りたがるストーカーだ。」
「ちょっと待ってよデミ兄ちゃん!!」

突然フトソンが、着ぐるみを脱ぎ捨てると、アーガスが出てきた。

「僕頭に被ったことは無いよ!」
「そうだな。間違った。下着だった。」
「なんで知ってんの!?」
「適当に言ったのに当たっとるんかぃィィィ何をしとるんだ貴様はァァァ!!」


…………また嫌な夢を見てしまっ…………ってホントに嫌だわこんな夢!!


デミテルは弾けるように目を覚ますと、自分にかかっている布団を蹴り飛ばした。

「ふざけるなぁ!!こんなアホな夢で何をどうしろというんだ!?読者も私も大混乱になるわ!!」
デミテルは一人喚いていたが、やがて、落ち着きを取り戻し、辺りを伺った。

白い壁の部屋だった。生活用具は自分がいるベッド以外見当たらない。

人の石像が一つ、置かれていただけだった。背はデミテルと同じくらいで、いわゆる『考える人』のポーズだった。デミテルはベッドをよっこらせと降りると、石像に近付いた。

「……前々から思っていることだが、『考える人』という石像は一体何を根拠に『考える人』なんだろうか。普通全裸で何か考えんだろう。」
『ふむ。では、ポーズを変えようか?』
「そうだな。」
『どのようなものがいいかね?』
「アレ。マトリックスのあれがみたい。」
『ハイヤッ!』

石像は立ち上がると、思い切り背中をのけ反った。

『どうかね?』
「背骨折れないか?」
『石だから背骨は無い。安心したまえ青年。』
「そうか…………」

…………つーかアレだな。石像が喋ってるな。喋ってるどころか、マトリックスのアレのポーズしてるな。寝ぼけてて普通に流してしまった。今更リアクションを取りに行くのは逆に恥ずかしいな。ん。そういえば首が治ってるな。


デミテルは適当に流して、首をこきこきさせながら、流暢な声を発する石像に話すことにした。

「貴様は何だ。モンスターか?」
『まぁ、その類のものだ。ゴーレムに近いかな?まあ、歩くこともままならぬがね。私が出来るのは音楽を奏でるぐらいだよ。』
「音楽?」
『人は私のことを、喋るMP3プレーヤーと呼ぶ。ただし曲は一曲のみだが。』
「どこの馬鹿だそんな世界設定無視した呼称をした奴は。」
『私自身だが?』
「………。」

ちょっと可哀相に思った。

石像はマトリックスポーズのまま、年季の入った笑いをした。

『思いの外元気なようで安心した。彼女も喜ぼう。』
「彼女?ルナのことか?」

デミテルの頭をルナの姿が過ぎった。輝く美しい黒髪、妖艶な瞳、口元、裸体………

ハッとなって、デミテルは頭をブンブン振った。途端、咳を切ったように胸が高まりだした。


な、なんだこれは………奴の顔を頭の中で浮かべただけで……考えてみれば、最初に奴を見た時も似た感じが……だが最初の時より確実に…………

まさか………いや、そんなわけあるまい………………


『どうしたかな?顔が真っ赤だが?』
「な、なんでもないわ…」
『ふむ……』

石像は、石の重い瞳を細めた。何だか物悲しそうに。

『君も光に魅せられたか………』
「何だと?」
『君は先程から足元がそわそわしているが、どうしてかな?』
「む………」

ルナの元に駆け出したいから、などと言うぐらいならば一日中フトソンと抱き合っていた方がマシだ。いややっぱしそれもヤダ。せめてリミィにしよう。

「…別に。」
『私と会話をしているというのに、視線が扉にチラチラと向いているね。どうしてかね?』


『すぐにでも彼女の元にゆきたいのかな?』
「違う。アレだ。ションベンに行きたいだけだ。」
『おや?あれはルナだ。』
「ルナーッ!!私だァーッ!!結婚してくれェェェェーっ!!」
『…。』
「…。」

自分でも気付かないうちに、デミテルは石像が指差した窓に身を乗り出して絶叫していた。何故か服を脱ぎながら。デミテルは恐怖でピクピクと体を震わせた。

「なんだ……これは………」
『窓だが?』
「んなもんは見りゃあわかるわアホンダラッ!!私が言いたいのはなんで私があの女にプロポーズの言葉を叫びながら半裸になっとるんだっつー話だ!!ああ!?よく見たら社会の窓も空いてる!?塔の窓どころかこっちの窓まで!?」
『せっかちだね君は。』
「失礼なことを抜かすなぁ!!私はどっちかっというとじっくり行くタイプなんだよ!!こんな一気に行かず少しずつジワジワとだな……」
『なぁに恥ずかしいことでは無いよ。』

マトリックスポーズで、石像は落ち着いた声で言った。

『何も君が初めてじゃない。彼女に魅せられたのは。』


――――――。

ふふ―ふふふ―――

来たわ―――ついに来た―…

復活の時がッ!!思えば以前偶然戻れたのは26話も前……

いや。もう過去なんて振り返らない。必要も無い!!アタシは前をただ走るだけ
よっ!


「ジャミリュっ!ふっかつ!!」
「…。」
「…。」
「…。」
「…。」

人型で、二等身程のジャミルが、そこにはいた。バンザイをしながら。

「よかったな!戻れて!」
「いやちょっと待てやぁああっ!?」

ジャミルは空になったルーンボトルをアルテミスの顔面に叩きつけた。

「いった!!どうしたんだよ。戻れたんだから僕に感謝しなよ。」

「いやぁ、それにしてもホントに戻れるなんてな。」

「適当だったのに。」
「いやちょっと待てやぁあああああ!?」

―――――――。

月とは、古来より美しいものとして認識されてきた。

夜、闇の中で美しく、妖しく光る月は、人々魅了する存在だ。

「だがしかし。その人を引き付ける美しさゆえに、恐ろしいものもある。」

「例えばそうだね。狼男は月を見て狼になるというね。」
「ああ。」
「それに、満月の日は犯罪の発生率が上がるそうだよ。」
「それも知ってはいるが…」
「月は人を魅了し、そして狂わせる。昔からそうだ。」

「さて。そのお月様を司る精霊様となれば、どういうことになるかわかるかね。」
「………。」

デミテルはベットに座り、今度はダビデ像の立ち方をしている石像の話を聞いていた。遠くで幼女が叫ぶ声がした気がするが、聞かなかったことにした。

瞳の無い目で、石像はデミテルを見ていた。

「君は、月の精霊の昔話を知っているかね?」
「それならば………」

確か大昔に、世界中に毒を巻こうとした悪い王様たちがいて、月の精霊がそれをやめさせようとして捕まって………何かそんなんだったな。子供を寝かしつけるのによく使われるメジャーな話だ。

お伽話だと思っていたが……

「彼女はあの時と今と、ほとんど変わっていない。争いを好まぬ優しい子だ。」

「しかし同時に、甘い子でもあった。」

「あの子は、青年。話し合えば必ず全てがわかりあえると信じていた。だからこそ、毒をまこうとした者達に話をしようとした。しかし、月の光が力の源である彼女は、月の無い夜に捕まってしまった。」

「何故彼女が、捕まったのかわかるかね?邪魔ならば、殺そうと試みればよいのに。」
「それは…」
「美しかったからだよ。」

「彼女の光は、力は、見る者全てを恋に落とす。人間が、月に魅了されるように。彼女を助け出したという騎士も、彼女の光に魅了されたからだろうね。」


「恋とは、その人を欲しがるということ。欲しがるということは、手に入れる為に争うということ。」

「争いが嫌いな彼女自身が、争いの火種となってしまう。なんと悲しいことか。」

「そして今。彼女はまた求められている。彼女の力を欲っする者達がいる。」

「だが、彼女が誰かの為に力を使うことなど、無いだろう。」

「少なくとも、ついさき程まで私はそう思っていたのだがね。彼女が君を助け出すために全力で力を使うまでは。」

――――。


「……貴様のダラダラした長話を要約するとこうか。」

「私はあの女の光のせいで奴を好きになっていて」

「さらにあの女があんなエセ平和主義者なのは、もう何度も自分の光のせいで嫌いな争いの火種になってきたからか?」


まったく……

デミテルは眉間にしわを寄せ、指で押さえた。


『私の為に争わないで』なんて漫画みたいな台詞、現実で使う機会なんぞ、無いと思っていたが、

あの女程この台詞が似合う奴はおらんな。

はぁ…


デミテルはボリボリと頭を掻くと、立ち上がり、部屋の扉に歩き始めた。

「どこに行くのかね。」
「あの女んとこだ。」

石像は目無き目を見開いた。

「君は私の話を聞いていたのかね?君は彼女の光にほとんど侵食されている。相当強力な月の光を見たのだろう。」

「もう一度彼女に会えば、君の心はルナに完全に狂うだろう。かつての悪い王様たちのように。騎士のように。ルナも、それがわかっているからこの部屋に来ない。」

「青年。ルナは君を大事な人間だと考えている。私は詳しくは知らないが、どうやら君は、争いを全て根本から否定していた彼女に、何か影響を与えたようだ。彼女は、そんな君を狂わせたくないのだ。」

「だから、私が先程言った通り、ここを去りた…」
「バカバカしい。」
「?」

デミテルはフンと、鼻を鳴らした。

「まったくどいつもこいつも。どーして女の精霊という奴はめんどくさい奴ばかりなんだ。ドSの水の精霊しかり。」

「この私が?月の光に狂うだと?やれるものならやってみろだ。私はあの女を手ごめにし、そして達成せねばならぬ使命があるのだ。復讐という名の使命が。」

「水の精霊にも言ってやったことだが、人が人をそう簡単に好きになってたまるか。ましてこの私が。おい見ていろ石像。今からこの私が月の光などものともせず、あの女を手に入れてやる。恋をしたからなどではなく、ただ単純に利用する為にだ。」

「………仮に、それが出来なかったとしも」

デミテルは黒いマントを翻し、部屋を出た。

「……出来なかったとしても、悪いが私は自分の命を救った奴に対して、顔も合わせずに帰る程傲慢でもないわ。」


――――――。


戦うことは、全て悪いことだと、そう思っていた。

どんな理由であろうと、人を傷付けるのは……

私は、争いを好みません。

そう自分に言い聞かせ、戦うことから逃げて、数千年。私は…

私は、今の世界をどう思っている?ダオスに率いられたモンスター達は、憎しみをたぎらせ、次期に人間達に戦争をする。
イーブルロード達が私を連れていこうとしたのは………

『どぅも貴様を手に入れようと動いてる人間どもがいるらしくてな……』

……いづれ、私に協力を求める人間が私の元へ来る。今までの私なら、何があっても拒否した……

けれど…今の私は


私が護りたいモノは……

「何かお悩みのところみたいだけど、失礼するわぁ。」

開けっ放しの石の扉をくぐって、女が一人、空浮かぶ月の車に座るルナの前に現れた。

「まったく………最初はいきなり幼女にされてびっくらこいたけれど、どうにかなってよかったわ。」

女は、赤に近い短い髪をして、羊のような角を二本、頭から生やしていた。真っ赤な瞳、つり目、とがったやい歯、コウモリのような翼。

「さぁて?アンタが月の精霊様よねぇ?」

調子の良い声で、女は言う。そして、フフンと笑った。

「最初はただこの姿であの馬鹿ハーフエルフをアレするつもりだったけど、もっと良い方法があるわ。」

「アンタをアタシの膝元にひれ伏させれば、さらにアイツにギャハンと言わせられるし、アルヴァニスタの失敗もダオス様に言い訳出来るわ。一石二鳥よ。」

女の周りが、淡く青く光り、そして風が吹き上がり始めた。女は歯を剥いて笑った。

「さっ。じゃ、虫との約束を果たして上げなきゃ。パーティーよ。ルナお姉さま。」

「このジャミル様にひれ伏しなっ!!アイストー」

次の瞬間

ジャミルの後頭部にデミテルのドロップキックが炸裂した。

ジャミルはキメ顔のまま吹っ飛び、ルナの横を通り抜け、その背後の石の壁に顔面を叩きつけられた。顔は壁にメリ込んでいた。

デミテルは床に器用に着地した。そして、じっとルナを見ていた。ルナは目を見開いた。

「デミテ」
「ルナたんんんんんんっ!!」

一瞬誰が叫んだのかと思ったが、デミテル以外ありえないことに、ルナは気付いた。

デミテルは金色に輝く目でルナをまるで空腹で気が狂ったコヨーテのように凝視していた。いつものクールぶった青い目はどこにも無かった。

「デミテ」
「ルナたん。結婚しよう。」
「はいい?」


いや……ちょっ……今まで私の光に魅せられた人はいたけれど、こんな……


「無言の承諾でOKだな!!いよっしゃあああああ」

一人で納得し一人で戦闘勝利のファンファーレを上げたデミテルは、次の瞬間ルナの真ん前に瞬間移動し、彼女の手を取った。顔が近い。鼻息が荒い。

「復讐?私は一体何を言っていたのだろう?怨恨を晴らすことに何の意味がある?」
「デ、デミテ」
「復讐を果たすことに何の意味があろうか?何が残る?あるのは虚しさだけ。争いなど見苦しい。そうだろ?ルナたん?」
「いやあの、ルナたんはやめ」
「私に必要なのは復讐なんかじゃない!愛だったのさ!!」

『誰だお前は』というレベルだった。デミテルは金色に輝く瞳をだんだんとルナの瞳に近付けていく。やはり鼻息が荒い。

「ああ神よ。ありがとう神よ!私と彼女を出会わせてくれて!この運命に誓って、私は彼女を必ず幸せにしよう!!何故ならば、それが私自身の幸せであり幸福であり世界の希望であり………うわあああああルナったあああ」
「うっせえぇええっ!!」

デミテルの横っ面に、ジャミルのドロップキックがメリ込んだ。


―――。


塔の一階は、白い煙に満ちていた。住み着いているモンスター達は残らず眠りに落ち、動く者はいない。ただ一人を除いて。

二階へと続く扉の前で、竹笛の音色が響く。扉は、一人でに開いた。わざわざ石像から音楽を奏でなくとも、自ら音を奏でれば扉は開くらしい。

ニンジャはニヤリと笑って、階段を登った。

つづく

思いのままにあとがき
二か月ぶりです。ホントスイマセンです。

『というか、56話で春休みの宿題の話してるのに58話が十月ってどういうことだよ!死ねよ自分!』とか思ってます。ごめんなさい。


テイルズさん
>ルナつえーーーー(笑)フトソン、リミィ出番ねーーーーーーー(笑)

ホントにねーーーーー(笑)誰か助けてーーーーー(待てコラ

dying manさん
>デミテルが死んで『その後、彼らの姿を(ry』にならなくてよかったです(笑)

ふ…わかりませんよ。ある日いきなり何の前触れもなくチョコケーキ喉に詰まらせてポックリ逝くかm(待てや

コメント

新作!!!
打ち切られたのかと思ってビクビクしてましたよw

ようやく来ました♪月一ペースならどれだけ楽しみなことやら。

最近はラジオばっかりやっています。ついでにへんたい東方、東方社会人なんかも見ています。が、声あてをしたい作品の一つが、デミテルになっちゃったりしています(笑)

うちの引きこもりの面々を引っ張って声当てしたらURLを貼りますね(笑)

いつになるのかな?

次回はいつごろなんて書き込んでいただけると狂って喜びます

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