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「なんだ。まだ手間取っているのか」

　ミッドガルズ城に隣接して建てられている、騎馬隊用の大きな厩舎。その前で、一匹のシルバードラゴンが身体中に縄を括られ、沢山の兵士達に引っ張られながらも、抵抗していた。口にはくつわが付けられて、牙を封じられている。ライゼンは不機嫌にそれを見ていた。騎馬隊の隊長が急いで駆け寄った。

「先程まで大人しかったのですが、また暴れ出しまして。あの、やはり殺してはいかんのですか」
「こいつは、例の魔科学道具の実験台にする。兵器を作るだけが魔科学ではない。使えばこいつの記憶を読み取ってダオス軍の内情を知ることが出来る筈だ。ショックで死ぬかもしれんらしいがな。対モンスター用の麻酔薬を矢に塗ってもっと撃ち込め。その程度じゃ死なん……」

　その時、地響きがした。ライゼンが振り向くと、城の方から煙が立ち昇っている。騎馬隊隊長の言葉も聞かず、ライゼンは城へ駆け出した。

第七十一復讐教訓「人の生き方は変わっていく」

　中庭の騒がしい音を聞きつけ、侵入者の捜索を行っていた兵士たちが駆けつけ始めた。彼らは始めにワンズ、ツーサム、スリーソンの背中を見つけた。

「ワンズ隊長!!　これは一体……！」
「皆さん!!　武器を構えなさい!!　来ますよ!!」
「来るって何が……」

　兵士達が足を止めた瞬間、凄まじく素早い無数の何かが、彼らに飛び掛かり、首にかじりついた。兵士らは悲鳴を上げた。それは狼ほどの大きさで、緑色をしたトカゲのようだが、その顔は実に凶悪で、口からはみ出した牙は実に禍々しい。

『くせえー！　人間界超くせえー！　こんな障気が全然無いとこに呼び出さないでくだせえよジェストーナの旦那ー！』
『くせえー！　くせえー！』
「喧しいグレムリンレアーども!!　てめえらは雑魚どもの相手してなぁ!!」

　ジェストーナの命令が響いた。彼の前に真っ黒い影が出来、そこからグレムリンレアー達が飛び出してくる。尻尾をバネに使って飛び跳ねながら、ミッドガルズの兵隊達に向かっていった。ワンズはレイピアを、ツーサムは戦斧を、スリーソンは先が折られたサーベルを抜き払った。

「さあてデミテル。これで邪魔は入らねえ」

　ジェストーナは四つの拳の指を一つに合わせて鳴らした。アルテミスの『レイ』は、ジェストーナに有効でありダメージはあったが、未だ倒れそうには見えなかった。

「さあ！　俺を制裁出来るものならやってみやがれ!!」

　デミテル、フトソン、召喚されたアルテミスは、少しばかり額を寄せて話し合っていたが、やがて体を離してジェストーナの方をキッと睨んだ。ジェストーナはほくそ笑んだ。

「俺様を倒す算段でもついたのかぁ？」
「ああ。とっておきの策だ。ジェストーナ」
「ほう。やってみろよ。デミテル」
「それは……」
「それは？」
「逃げるんだよォ！」

　三人は横に並んで、ジェストーナに背中を向けて全力疾走で走り出した。アルテミスは羽根を動かすだけで良いのだが、合わせて走るポーズをしていた。ジェストーナは二秒ほど制止していたが、次の瞬間、こめかみがブチリと鳴った。

「この俺様を!!　ナメるのも!!　大概にしろこの腐れ野郎がぁ!!」

　ジェストーナは庭園の石のタイルを、足の無い下半身で弾き飛ばし、鬼の形相でデミテルを追いかけだした。庭園を突っ切りながら、並んで走るデミテルにフトソンは叫んだ。

「デミテルさーん!?　この作戦はホントに上手くいくんだなー!?」
「いかなかったら死ぬまでだ!!　お前がな!!」
「ふざけろなんだな!!　死ぬときは一緒なんだな!!」
『僕はいざとなったら契約破棄して逃げるからそのつもりでね!!』

　三人の精神はバラバラだったが、動きは見事に揃っていた。デミテルは後ろを振り向きながら庭園を走り続ける。

「とにかく奴のあの下半身では、マッハーフエルフである私の足には追い付けんから作戦は簡単に……」

　余裕の発言をしようとしたデミテルの口の動きが停止した。ジェストーナが、まるで蛇が這うような動きで、低空飛行で追い掛けてきていた。ジェストーナは飛べたのである。「しまったぁあ!?　いきなり誤算したぁあ!?」

　デミテルは本気で走り出し、フトソン達を追い抜いていった。グレムリンレアー達と戦う兵士達の間を縫いながら。「どけぇ野次馬ども!!」
　そのまま城の中に入り込んだ。途端、殺気を感じて横に飛び退いた。ジェストーナがフトソン達を飛び越え、下半身を前に突きだし、城の床に思い切り突っ込んだ。凄まじい破壊音とともに、石造りの床に蜘蛛の巣のようなひび割れが広がった。遅れてやって来たアルテミスがデミテルの後頭部にしがみつく。

『何やってんだよ!!　ここまで一緒に走る作戦だったろうが!!』
「いや、これでいい……」

　デミテルは体勢を整えると、ジェストーナに向かって指を上に突き上げた。「さあ、追い付いてみろ」

そう挑発すると、頭にアルテミスを乗せたまま城の廊下を走り出した。ジェストーナは即刻追おうとした。が、一瞬動きを止めて、背後を見た。ビッグフットのガキがそっと、デミテル達とは反対方向に走り出したのが見えた。ジェストーナは舌なめずりをして考えた。どれ、あいつらの策とやらに乗ってやろう。その上で叩きのめしてやる。そうでなきゃ俺様の気が済まねぇ。
　かくして、フトソンを無視してデミテル達を追った。

　一定の距離を保ちつつ、デミテルは鞭を構え、振り向き様にヘルジェムを放った。真っ赤なエネルギーの塊が五発、空を切ってジェストーナに襲い掛かったが、その内四発はジェストーナの四つの腕の手の中で握り潰された。残った一発が顔面に向かったが、ジェストーナはそれを大きく開いた口に入れると、そのまま噛み潰してしまった。「甘えヘルジェムだなぁ!!」

　ジェストーナの飛行スピードが加速した。このままでは追い付かれると判断し、デミテルは走りながら詠唱を始めた。魔力量が心配だったが背に腹は変えられない。『ストーム』でジェストーナを吹き飛ばそうとした。その時、ジェストーナが床に飛び込んだ。いや、またしても床に出現していた真っ黒い何かに飛び込んだのだ。デミテルは思わず足を止めた。
「何処に……」「お前の後ろだよ!!」

　赤い姿がデミテルの影の中から飛び出し、後ろからデミテルの両腕を締め上げた。腕が引きちぎれそうだ。デミテルは悲鳴を上げ、ジェストーナはそれを心地よさげに聞いていた。アルテミスが何かしようと構えたが、ジェストーナは空いている腕で床に叩き落とした。

「くそ……こんな能力があるなら、私に潜入を手伝わせる必要など……」
「そういや最初会った時言ったなデミテル？　俺様が城に潜入するのを手伝えと！　だが、俺様は見ての通り闇の中を通って短距離の瞬間移動や、物体移動が出来る。魔界への小さい穴ならすぐ開いて部下も呼べる。ならば何故手伝えと言ったと思う？」

　デミテルの肩が嫌な音を立てる。デミテルはされるがままに、苦悶の表情でジェストーナの嫌な声を耳に入れるしかない。

「宣戦布告だけじゃつまらねえ。エドワード・D・モリスン、そして月の精霊ルナと契約した妙な連中。奴らを殺す目的と……お前の『洗脳』を修復する目的……」

――何？

「『洗脳』がしっかりかかり直ったか、奴らを殺させる仕事をさせて試すのに丁度良かったからさ」

この私が……洗脳……？

「気付いてないんだろう？　お前は自分の意思でダオスサマに従ったと本気で……」

　ジェストーナの言葉が詰まった。締め上げてくる腕の力が緩んだ。ワンズ、ツーサム、スリーソンの三人が、それぞれの武器をジェストーナの背中に突き刺していた。しかし、身体奥深くまでは貫いていない。ジェストーナは全身に力を込めて、四本の腕を振り回し、周囲の人間全身を殴り飛ばした。ワンズ達とデミテルは背中を床に叩き付けて倒れる。デミテルは一瞬放心状態になっていた。しかし、アルテミスの蹴りが顎に入って我に返った。

『なにやってんのさ！　ボーっとしてる時間ないだろっ！』
「わ、わかっとる」

　急いで立ち上がる。考えるのは後だ。アルテミスをまた頭に乗せて、駆け出した。ジェストーナは背中に刺さったままの武器を、後ろの腕で器用に抜いて投げ捨てていた。駆け出したデミテルの背中を見ながら考える。何故あのガキは『レイ』を使わなかった？　考えがあってのことか？
　ジェストーナはまたしても体を浮かし、デミテルを追った。

「我々は眼中にも無いわけですか」

　ワンズがふらつきながらも立ち上がった。投げ捨てられたレイピアを拾い上げて、そして思案した。ジェストーナはあの男を『デミテル』と呼んでいた。デミテル……デミテル……

「思い出しましたワンズ殿」
「あ？　どうしたスリーソン」

　床に刺さった戦斧を引き抜こうとしながらツーサムが尋ねた。スリーソンは折れたサーベルを見つめながら答える。

「以前、アルヴァニスタから来た魔術部隊の者が言っていたのです。戦争のせいで手配書こそまだこちらに来ていませんが、デミテルとは……」

　その話を聞いた時、ワンズの混乱はより一層拡大した。町を滅ぼすほどの犯罪者が、ダオスの部下を倒そうとしている？　これは一体全体なんだというのだ。

　ミッドガルズ城、二階。デミテルはある部屋の扉を蹴り飛ばして、中に飛び込んだ。長方形のとても広い部屋。大きな長テーブルが絨毯を下に敷いて、部屋の真ん中を突っ切って配置されている。デミテルは息切れし、肩を落として両膝に手を付き、ほんの少しだけ体を休めた。ここまでずっとジェストーナのタックルを避けつつの全力疾走で、無理もなかった。場所はここで合っている筈だ。しかし、そうか。この場所は会議室か……。

『いくら言っても私の話は聞かないし、だからといって私を帰らせようともしない。困ったもんだから、入口の扉ぶっ飛ばして勝手に帰らしてもらったよ』

　デミテルは力の無い笑みを浮かべた。まさか、師匠と弟子で、全く同じ所でバカをやるはめになろうとは。
　その時だった。一発の稲妻が、デミテルの背中に直撃した。体がその場に一瞬跳ね上がったあと、部屋の窓に体をぶつけた。アルテミスにも感電したが、頭部にしがみついたままだ。デミテルとアルテミスは悪態を突きながら、部屋に入ってきたジェストーナを共に睨み付ける。

「貴様……」
「魔術は使えない筋肉馬鹿とでも思ってたか？　悪いが魔術も一通りできる。だが、そんなもんを使うより、自分の手でやった方が愉しいんでなぁ」

　デミテルは窓に背中を押しつけながら、なんとか立ち上がった。そして確信する。腕力、耐久力、残忍性、そして召喚や魔術まで使いこなす。腹立だしいがこいつは強い。クレス・アルベインどもがこいつと戦って勝てたかどうか。

「さあ、何かしようとしてんだろ。とっておきの策があるんだろう。やってみろ」
「その前に、一つ聞きたい」

　デミテルは背中の窓から見える空を少しばかり確認しつつ尋ねた。まだ「タイミング」が来ていない。時間稼ぎが必要だ。

「貴様は何故ダオス様の部下になった？　貴様の性格上、人に仕えるのは性に合わなさそうなんだがな」
「戦争が出来るからだ」

　何の迷いもなく、間もなく、悪びれもなく、ジェストーナは言い捨てた。デミテルは自分の耳を疑った。ジェストーナは続ける。身体中怪我だらけだというのに、全く意に介していなかった。

「前言ったように、ダオス軍のモンスターは人間どもに無惨に狩られた連中の、生き残りの集まりだ。後は旨い汁を得るために来た余所者達に、派遣モンスター、そして俺のような魔界から来た魔族。幹部のほとんどは魔界から来た魔族さ。
　ジャミルとかの他の魔族連中は、ダオスがモンスター率いて人間どもに喧嘩売ってると聞いてやって来て、そして奴の強大な力を目の当たりにし、ついていくことを選んだ。奴なら、人間界征服という魔族の野望を叶えてくれると考えたからだ。
　だが俺はな。ダオスの魔科学への目的も、モンスターどもの復讐の目的も、まして他の魔族の人間界征服の目的も、どれもこれもどうでもいいんだ。ただ、殺し合いをしたいのさ！　血みどろの命の奪い合いがしたいんだ！　一人でも多く人間どもを血祭りにしたい！　血を浴び、肉を裂き、骨が砕ける音を聞きたいんだよ！　ただそれだけなんだよ！　理解したか？」
楽しげにジェストーナは語った。デミテルは拳を窓に叩き付けた。ガラスに小さくヒビを入れた拳は、震えていた。ジェストーナの戦う目的は、あまりにも『何もなかった』。悲しい過去とか、怒りとか、憎しみとか、そんなものは全くの皆無。今まで旅の中で出会ってきた、あらゆる者達の言葉が彼の脳裏を駆け巡った。

『やっぱり来ないのかな……モンスターと人間が共存する……世界なんて……狩る側と狩られる側……襲う側と襲われる側……この関係しか人とモンスターは繋がらな……』
『ここの子供は、戦争や内紛の孤児ばっかり。元気に振る舞ってる子供もいるけど、全然喋んない子とかもいる』
『あの娘だけじゃないんです。ダオス軍との戦いで、ああいう子がどんどん増えてる……ここにいる子は戦争で親を失った子ばかりです。どうしてこんなことに……』
『以前の私なら、争いが嫌い。ただそれだけだったでしょう。その争いを止める為に戦おうなんて、考えようともしなかった……争いをしない自分への可愛さで……貴方が、戦うことを、教えてくれた』

「そうさ。その目だよデミテル」
　ジェストーナは、まるで汚物を見るような目でデミテルを眺めていた。デミテルの目は青く、怒りに道満ちていた。

「義憤に満ちた目だ。正義に燃える目だ。こんな糞野郎は許すわけにはいかないという目だ。それが本来のてめえなのさ。洗脳が半分解けたお前なんざ所詮その程度だ。悪人？　ちゃんちゃらおかしいぜ。お前は吐き気がするほどの善人……」
「やかましい」

　私は。今までも何度もこの迷いに苛まれてきた。復讐を誓いながら、理由を付けては他人を助けていた。マクスウェルに二択を迫られた時。ルナをダオスガードから助けた時。何度も己の中でこの壁にぶつかったのだ。何とか自分を正当化した。リミィがうるさいから。利害が重なったから。二択とも手に入れるのが真の悪人だとも息巻いた。目の前のこいつのように「暇潰しだ」とも言った。そして、今回は？

　お前にとって悪とはなんだデミテル？　ダオス様のように、世界中の人間を敵に回しても己の意思を貫く生き方。己の欲求のために他人に害を及ぼしてでも我を貫く生き方。それが、私の憧れたダオス様の、生き方。そのダオス様に付き従う自分も悪人だと信じてきた……。
　『他人に害を及ぼしてでも』？　例え、戦乱で私と同じような孤児を生んででもか？　その孤児達を巻き込んで傷付けたとしても？　戦乱に関わらずに平和に生きているモンスター達に偏見が及んだとしても？　争い嫌いな優しい女を、力があるからと言って、戦争に参加させるはめになったとしても？

「私は悪人だよジェストーナ」

　ふと、無意識に言葉が漏れた。ジェストーナは首を傾げる。

「他人の言うことを聞かずに、自分の我を貫く、それが私の中の悪だ。それが社会的に善行か悪行かは第三者が勝手に判断すればいいことだ。そして、『他人』というのはだ」

　デミテルはまた窓を確認した。来ていた。予定より遅かったが、こちらにそれが来るのが確認出来た。

「『他人』には、ダオス様だって入ってるんだよ!!」

　巨大な何かが窓に向かってくるのを、ジェストーナは見た。会議室の窓が全て割れて、部屋の中に四散した。シルバードラゴンが、小さい翼を羽ばたかせながら、窓枠と石の壁を吹き飛ばして頭から突っ込んできたのだ。フトソンを背中に乗せて。

「デミテルさぁん!?　言った通りにしたら言うこと聞いたけど、僕が乗り物酔いで死にそうなんだな!?」
「文句ならアーガス・A・マッキンタイアに言うがいい!!」
「誰なんだなそれ!?」

　デミテルは人差し指を口の前に寄せ詠唱すると、トラクタービームで体を浮かし、割れた窓から外に出た。

「最後の仕上げは貴様次第だぞフトソン!!　例えくたばってもしっかり時間稼ぎしろよ!!」

　フトソンがドラゴンの背中から振り向いて、デミテルと目を合わせた。目が何を言っているかデミテルはわかった。死んでたまるか。生きて文句を散々言ってやるから覚悟しろ。
　ジェストーナが顔を腕で覆い、割れたガラスの破片から守りながら喚いた。

「デミテル!!　てめえさっきの発言は、ダオスの野郎から離反するととっていいのか!?」
「ダオス様とは、いずれ話をする！」

　体を地表に降ろしていきながら、デミテルは得意顔で言った。顔から憑き物がなくなったかのように、スッキリしていた。

「魔科学を滅ぼす為だけなら、全く無関係のミッドガルズ国民まで巻き込んで大戦争する必要などない!!」
「それで人間どもに恨みを持ってるモンスターどもが納得すると思ってんのか!?」
「個人的復讐なら何も言わんさ!!　私も復讐者だからな!!　だが、規模でかくして戦争にして関係無い連中まで巻き込むのは、私は気に食わん!!　例えダオス様と意見がぶつかっても、それが私の生き方だ!!」

　デミテルの姿が視界から消えた。追おうとしたジェストーナの前に、シルバードラゴンがガラスの破片を蹴り飛ばして立ち塞がった。ジェストーナは目を血走らせながら手を振り払って叫ぶ。

「てめえは俺の下僕だろうが！　どういうつもりだ！」

　ドラゴンが姿勢を低くして、ジェストーナに向かって低い咆哮を上げた。ジェストーナはそれで何を伝えたいか理解したようだった。額に手を当てて、ひくひくと頬を震わせる。

「人間どもに縛られてた自分を、そのビッグフット族が体張って助けてくれたから、恩に報いたいと。それに、俺様は扱いが悪いから嫌いだ、か……」
「よくわかるんだなドラゴン君。上司が糞だと、部下はやってらんないんだなホントに」
「皆殺しにしてやる」

　殺気立つジェストーナに向かって、シルバードラゴンが一歩前に踏み込んだ。巨大な口の中から光が漏れ、次の瞬間、光線を発射した。ジェストーナはこれを四本の腕で受けると、腕を開いて弾き飛ばした。光線は四方八方に飛び散って、会議室を破壊した。光属性の攻撃は腕を焼いたが、決定打にはなっていない。フトソンはデミテルと額を寄せ合って話し合った時に、覚えさせられたドラゴンの扱い方を必死に暗唱した。恐る恐るドラゴンの頭の、少し鱗が柔らかい箇所を二回叩いた。

　咆哮を上げ、ドラゴンはジェストーナに突進した。それをジェストーナはやはり四つの腕で受けた。衝撃で踏ん張った下半身が後ろに押し出されていく。背中にテーブルがぶつかって、これもまた床の絨毯ごと押されていった。しかし、やがてテーブルは動きを止めた。自分の倍以上の大きさのドラゴンの突進を、ジェストーナは受け切ったのだ。そして、そのまま頭を掴み、ゆっくりと持ち上げて、真後ろへと反り投げた。ドラゴンは背中からテーブルに叩き付けられ、テーブルを粉々に破壊した。

　ジェストーナが体勢を戻し、背後を振り向いた。途端、巨大な竜の顎が、ジェストーナを頭から飲み込み、胴体を噛み千切ろうとした。フトソンがドラゴンとテーブルの間で踏ん張って、衝撃を解消していたので、ドラゴンはすぐに体勢を取り直して攻撃に移れたのだ。壊れたテーブルの上で不安定に立ちながらフトソンは叫んだ。

「そのまま噛み砕いちゃえばいいんだな!!」

　しかし、顎は完全には閉じなかった。四つの腕がしっかりと顎の動きを押し留めていた。強烈な破裂音がフトソンの耳をつんざいた。ドラゴンの口の中から黒い煙が吹き出して、そのまま気絶して横に倒れる。ジェストーナは血を、伸びてしまったドラゴンに吐き捨てた。

「口の中に直接サンダーブレード食らうのはどんな気分だ。さあ次は」

　余裕の表情のジェストーナの腹に、フトソンの拳がめり込んだ。一瞬、ジェストーナの体がよろめいた。その隙をフトソンは逃さず、殴るのをやめなかった。雄叫びを上げながら、顔、胸、腹と次々と拳を叩き込んだ。ジェストーナは最初こそ不動の姿勢だったものの、次第に殴られるがままに、頭や体が振り回され始めた。
　最後に、拳を組んで高く振り上げると、思い切り頭に振り落とした。ジェストーナは顔面を石の床に叩き落とされた。動かない。フトソンは息切れしながらジェストーナを見下ろしていた。

「こ、これで……」
「これでも死ななかったらどうする」

　冷たい声がした。フトソンの顔面に真っ赤な手のひらが押し付けられて、爪が食い込んだ。立ち上がったジェストーナは僅かに息が上がっていた。鼻血も出ていたし、左瞼はアザで腫れ上がっていた。歯が二本欠けていて、唇も切っていた。ジェストーナはこの時初めて、嬉しそうに笑った。

「痛かった。実に痛かった。肋骨も一本折れたみてえだし、腹は痛くて痛くて吐きそうだ。お前は十分強い。ビッグフット族のフトソンだったか？　認めてやる。全部終わったらてめえを俺の下僕にしてやるよ!!」

　にんまり笑って、フトソンの顔面ごと体を持ち上げ、そのまま部屋の壁にぶん投げた。フトソンは石の壁を粉々に突き破り、瓦礫に埋もれてしまった。ジェストーナは天井に向かって竜のような咆哮を上げた。ここにいるのは伸びて動かないシルバードラゴンと、瓦礫に沈むビッグフット、そして身体中から血を吹き出したドラコケンタウロスだけだ。ここに人間は一人もいない。

「これだ!!　俺様がやりたかったのはこういう戦いだったんだ!!　さあ、あとはデミテルてめえだけだ!!」

　目に入りかけた血を拳で拭うと、ジェストーナは意気揚々と割れた窓から外に飛び出した。そして、落下しながら地表を見下ろした。

　そこは、ミッドガルズ城の城門前だった。そこに、兵士の変装をしたハーフエルフが妖精と共にいた。真っ赤な、分厚い、実に古めかしい本を開いて、それを読み上げていた。あれはなんだ？　とジェストーナはいぶかしんだ。まさか、呪文書？　俺様が上で戦っていた間、ずっと唱えていたのか？　ちょっと待て。これだけ時間のかかる呪文って、一体なんだ。

「――焔の御志(みし)よ」

　その言葉を呟くと共に、デミテルは宙にいるジェストーナを見上げた。ジェストーナは身震いした。

「災いを灰燼と化せ――」
「まさかてめえがそんなの使えるわけ」
「エクスプロード!!」

　デミテルは指をジェストーナに突き付けて、その呪文の名を叫んだ。ジェストーナは急いで空を見上げた。空の果てから、小さい青い光の玉がこちらに落ちてくる。彼は悟った。この攻撃からは自分の飛行速度では逃げられない。ジェストーナは笑った。そして視線を落とし、膝から地面に崩れ落ちるデミテルに向かって叫んだ。

「『レイ』を使わなかった理由がわかったぜ!!　だが俺様はなあ!!　こいつにだって耐えきる自信があるんだぜデミテルゥ!!」
「いや、無理だ」

　肉体の全ての魔力を限界まで絞り出して、うつ伏せに倒れたデミテルは小さく呟いた。疲労感で体が全く動かない。かつてイフリートから譲り受けた上級呪文書をぎゅっと抱き締めた。

「貴様はそれに耐えられない。そいつはただのエクスプロードじゃないからな」

　ワンズ達が会議室にたどり着いた時、割れた窓の先に広がる空が一瞬白く光った。矢先、信じられない程強烈な衝撃波が生じて、彼らを吹き飛ばした。ミッドガルズ中の国民が、ミッドガルズ城の城門上空に巨大な爆発を目撃した。凄まじい衝撃波が都全体を襲い、街中の窓という窓が粉々に吹っ飛んだ。街上空の白い雲が一切かき消され、驚いた鳥達は一斉に逃げ出した。

　都が静けさを取り戻した時、デミテルは城壁にもたれ掛かって、ぐったりと座っていた。アルテミスがうつ伏せに倒れたデミテルの頭を必死に持ち上げて、何とか壁に寄り掛けたのだ。アルテミスは疲れ切り、汗だくになっていた。

『上手くいったみたいだな。お前が立てた作戦通り、レイを温存して良かったみたいだ』

　デミテルはヒューと息を吐いた。以前、砂漠でタイダルウェーブを使った時と同じく、体が動かなかった。いや、あの時は殺さないように威力を抑え、水はオアシスのものを利用したから、しばらくしたらギリギリ走る事は可能だった。だが、今回は、殺す気で、全魔力を込める為に時間を限界まで掛けて使ったから、疲れはあの時の比ではない。もう体が一生動く気がしなかった。

「貴様を通してレイを使えば、まぁあと五回は唱えられたろうが、奴を倒すには足らんかったに違いない。レイ五回分の魔力、全部エクスプロードに使ってやった。それでも、普通のエクスプロードじゃ奴は倒せなかったろうな」

　重い物が何か、城門前に鈍い音を立てて落ちた。デミテルはアルテミスの頭越しにそれを見た。ジェストーナだった。ほぼ真っ黒に焼け焦げて、煙を出している。うつ伏せに落ちていて、ピクリともしない。アルテミスはほっと胸を撫で下ろした。

『しかしまあ、良く思い付いたもんだ。召喚した僕の魔力と、ハーフエルフが持ってる魔力を混ぜ混んで使うなんてさ』
「クラース・F・レスターとやらには決して使えんだろうな……元々魔力を持つハーフエルフが、召喚術を使うからこそ出来る芸当よ」

　デミテルの頭にくっついている間、アルテミスは持っている力をデミテルにずっと送り続けていた。デミテルの肉体の中で、デミテルの魔力とアルテミスの魔力が混ぜ込まれた。エルフの血がなければ決して出来なかっただろう。

「あのエクスプロードは、光と火の両方の力を持ったエクスプロードだ。お陰でやっとあのタフガイ馬鹿を倒せた……」
『ぶっつけ本番でよくやったよ。まったく。頭がいいと言うべきか、無謀と言うべきか……』
「ただ強力な呪文をぶっぱなせばいいわけじゃない。強力な呪文が使えるから強い魔術師と言うわけじゃない。頭を使って、工夫した方がいいし、何より……」

　雲一つ無くなった青空を見上げ、デミテルは呟く。爆発で城壁が一部崩れた城を視界に入れながら彼は思い出す。そういえばあの時も、私は同じ街にいたのだ。あの人なら、上級呪文すら使わず弱い術だけで倒したかもしれない。なんたって「そっちの方がカッチョイイからな」

　体が熱い。着ている鎧と兜を脱ぎ捨ててしまいたかった。デミテルは視線を落とした。ジェストーナが立ち上がろうとしていた。
　立ち上がろうとしていた……？　『立ち上がろうとしていた』だって？

　ジェストーナは生きていた。今にも気絶しそうな程息を切らして、震える四本の腕で体を支えて、這いつくばっていた。少しずつ、少しずつ上体を起こしていく。肉体に焼き付いた炭が落ちていく。突然、血をドボトボと吐いた。

「俺様が……こんな……こんな……」

　とても戦闘を続行出来る状態には見えない。しかし、その目はデミテルをしっかりと見据えていた。デミテルは思わず笑ってしまった。私の負けだ。そう思った。ジェストーナがよろめきながら、ゆっくりとデミテルに向かって動き出す。それと同時に、怯えて震えるアルテミスの体が透け始めた。

『駄目だ。お前の魔力が切れたから、もうこっちにはいられない。頑張ってにげ……』

　言い終わらないうちに妖精は姿を消した。デミテルはハッと息を吐き、また笑った。馬鹿を言え。奴はまだ動ける。だが私はもう一歩も動けんのだ。ジェストーナがまた血反吐を吐くのが見えた。そしてデミテルに向かって語りかけてきた。言葉がところどころたどたどしい。

「デミテル……お前の負けだ……俺様が勝った……なかなか楽しかったぜ…………こんな愉しい殺し合いは久しぶりだった…………」

　彼の前に、またも黒い影が現れた。焼け焦げて醜くなった腕を突っ込む。そして、中から剣を一本引き抜いた。

「素手で殺す力すらねえのは残念だが、まぁいい。さあ、デミテル」

　満悦の笑みが、傷と火傷まみれの醜い顔に拡がった。「てめえは、ここまでだ」

「そういう訳にはいかないな」

　聡明そうな、毅然とした声がした。ジェストーナは震えながら首を、声がした方へ振り向かせた。ジェストーナとデミテルは目を見開いた。

「エドワード・D・モリスン……！」

　エドワード・D・モリスンが、羽織った外套を風で翻しながら、ミッドガルズ城を囲む城壁入り口に立っていた。呼吸が少々乱れて、ここまで走ってきたことが見てとれる。その鋭い目は、ジェストーナを強く睨み付けていた。

「その男には尋ねたい事が山程あるんだ。殺されては困るな。おい！　大丈夫か！」

　モリスンがぐったりしているデミテルに向かって叫んだ。ジェストーナの言葉を聞いていたので、変装していてもデミテルとわかったのだ。

「悪いが、ちっとも大丈夫じゃないな。げほごほ！」
「さっきのエクスプロードは君が？」
「ああ。おかげで虫の息だ」
「まったく。驚いたな……」

　モリスンは本当に驚いていた。あのジェストーナを。軍が過去の戦いで全く相手にならなかったジェストーナをここまで追い詰めるとは。どうやら私は彼の力を見誤ったらしい。

「悪いがここで死なせはしないぞデミテル。本当に君には聞きたいことが山程あるんだ」
「悪いが私は……貴様らの敵だ。何も話さんぞ」
「……やはりか」

　自分の予想は正しかったのだ。ハーメルという町を滅ぼしたこの男は、やはりダオスの部下らしい。しかしだ。目の前で起きたことは、ダオス軍のドラゴンを、体を張って撃退し、あの最悪のモンスター、ジェストーナを追い詰めた。

「君がどう言おうと、事情は必ず聞き出してやる。そして」

　モリスンはデミテルに向かって笑いかけた。それは、敵に向けたものでは決して無かった。「我々の味方になってくれると、有り難いね。さあ！　ジェストーナ!!　そこを動くな!!」

　ジェストーナは、今までの人生の中で最も追い詰められていると感じていた。普通に戦えば負けるつもりは無い。だが、この状態でこのモリスンと戦うことは自殺行為だとわかっていた。逃げるか？　駄目だ。物体の空間転送は出来るが、自分自身の肉体を転送させる力はもう無い。デミテルを殺したあとは、グレムリンレアー達を呼び出して体を運ばせるつもりだった。しかし、モリスンはそんな隙を見逃さない。この男ならグレムリンレアー達を一掃するぐらいの力はある。

　モリスンは少しずつ、ジェストーナににじり寄っていく。ジェストーナは目を閉じた。しかし、観念したわけではなかった。目を開くと、ニヤリとした。「まさか、俺様がこんなカッコ悪い手を使うことになるとはな」

　ジェストーナの前にまた黒い影が染み込んだ。モリスンとデミテルは息を飲んだ。影の中から、小さい男の子が沸き上がってきたのだ。少年の首をジェストーナは掴み、その喉に剣を突きつけた。デミテルは憤慨した。

「貴様!!　この期に及んで……」
「公園で玉遊びしていたガキさ！　あとで遊ぶつもりだったが、こんな所で役に立つとはな!!」

　少年は恐怖で震えていた。デミテルはその顔に見覚えがあった。孤児院で、デミテルに向かって長ったらしい必殺技を使っていた子供だ。デミテルは立ち上がろうと全身に力を込めた。だが、疲労しきった肉体は微塵も動かない。ジェストーナは見下したような声で叫んだ。

「残念だったなぁ!!　てめえは命懸けで人間のガキどもの為に戦ったのに、そのガキのおかげで俺様が助かっちまうなんてよ!!」
「モリスンさん!!　これは!?」

　聞き覚えのある若い声がデミテルの耳に響いた。モリスンの背後に誰かが走り寄るのが見える。クレス・アルベインだった。続いて、ミント・アドネード、クラース・F・レスター、そしてアーチェ・クラインが箒に乗って現れた。

　デミテルは歯軋りした。どいつもこいつも一体どこに行っていたんだ？　貴様らは善人気取りじゃないのか？　貴様らがあのドラゴンやジェストーナの行為に怒り、戦うべきじゃなかったのか！　貴様らがあの傷付いた孤児達の為に戦うべきではなかったのか!?

「ジェストーナ、何が望みだ？」
「動くなよ……いくら死にかけでも、お前達が動くより早くこいつは殺せるぜ。さて。そういえば俺様は元々この用事で来たんだったな」

　息を整えながら、ジェストーナは喋り続ける。剣の切っ先はぴたりと少年の喉にあり、隙はない。

「俺は宣戦布告に来たんだよ……ついに戦争が始まるのさ！　その挨拶に来たってわけだ……だが、それだけじゃ面白くねえ。これから戦争をしましょうと言うだけで、そのまま帰るのは俺の性に合わん……このまま一人も殺らずに逃げ帰ることもな。ここで、貴様らの命を絶っておけばダオス……サマもお喜びになろうというもの」
「何だと!?」

　クレスが怒りを隠さずに叫んだ。モリスンは身構えながらも、クレス達の前に腕を出して制止した。ジェストーナは舌なめずりした。

「動くなよ。少しでも動けば、このガキの命はないぜ……」
「汚いぞ！」

　ジェストーナはモリスン、そしてクレス達を一瞥すると、下半身の尾の先を地面に叩き付けて叫んだ。「自害しろ！　小僧とモリスン……それにそこの三人全員だ！」
　デミテル、貴様だけは俺自身の手で殺すがな……。そんなことを考えながら、牙をむき出してジェストーナは笑った。

「くそ……どうすれば……」

　クレスは拳を握り締めて呟く。ジェストーナを挟んで、向こう側に兵士が一人座り込んでいるのが見える。あのモンスターにやられたのだろうとクレスは思った。モリスンはしばらく目を閉じて黙っていた。やがて目を開くと、デミテルに視線を向けた。デミテルは必死の形相で、何とかして立ち上がろうと、もがいていた。モリスンの脳裏で、先刻のジェストーナの言葉がよぎった。『てめえは命懸けで人間のガキどもの為に戦ったのに』……。

「君たちは動くな。私がやる」モリスンは小さい声でクレス達に伝えた。
「何か方法が？　大丈夫なのか？」クラースが呟いた。慎重にならざるを得ない事を心得ていたからだ。

「やらねばならない。あの子を助けなければならない。そう……」こう答えて、モリスンはまた、デミテルを見つめた。そして言った。

「彼が、命懸けで護ろうとしたものを護る為に。それが、私が彼の行為に出来る礼だから……みんな。よく見るんだ」

　モリスンが、何かを唱えた。刹那、その姿が光り、姿が消えた。ジェストーナ、そしてクレス達が一瞬唖然とした中で、デミテルだけが見た。ジェストーナの背後にモリスンが現れる瞬間を。モリスンは瞬時に少年を奪い返し、そして、後方に座り込むデミテルに向かって投げた。ジェストーナには対処できるだけの力が残っていなかった。「貴様ぁ!!」

　デミテルは歯を食い縛って力んだ。腕がもげようが知ったこっちゃなかった。ここで動かないのなら、こんな腕は後で切って捨ててやる覚悟だった。震える腕が持ち上がる。そして、ひっくり返った状態で飛んで来た少年の体を、しっかりと抱き締めた。少年の両足の間から、デミテルはモリスンが、ジェストーナに刺されるのを目撃した。デミテルは何か叫ぼうとしたが、声が出ない。次の瞬間、モリスンとジェストーナ二人の体を、白い何かが包み込んだ。ジェストーナの絶叫がその場にこだました。

「放せ!!　この俺が、この俺がこんな所で……!!」

ジェストーナはモリスンが張った結界を、持てるだけの力で攻撃した。しかし、今の彼には大した力は無く、ひび一つ入らない。口から血を滴らせながら、モリスンは思った。もしもジェストーナが万全の状態だったならば、この結界は破壊されていただろうな……。

　強烈な光が結界の中で鮮烈に輝き、炸裂した。クレス達が気付いた時には、そこにモリスンとジェストーナの姿は跡形も無かった。

「モリ……スン……」

　デミテルがかすれた声で呟く。そして次の瞬間、ふっと力が抜けて、彼は気を失った。

つづく

思うがままにあとがき
　らいさん！！コメントありがとうございました！！こんだけ間が空いてたから、コメントもらえるとは思っていなかったです。投稿して５日後に偶然発見して下さるとは嬉しい限りです。

　今回、今までで一番文章量多かったような気がします。なんとかジェストーナのくだりまでは書き切りたかったのです。今回は二週連続で投稿できましたが、いったんまたここで少し力尽きると思います。申し訳ないです。
　言い訳として。どうしてこんなに長い事書けなかったか。理由は実にさまざまな方面で色々ありますが、作品内容に絞って考えるならこうです。ミッドガルズに来てからのデミテルさんは、「戦争」という実に大きな世界観の流れのうねりに飛び込んでしまいました。今までは自分の周囲の実に小規模な世界で馬鹿な事やってたのが、国規模の物語の流れに入ったので、どう彼が動くのか分からなくなってしまった。
　また、デミテルさんはジェストーナと会ってから「自分は善人なのか悪人なのか」ということに葛藤しまくってましたが、これは書いている私の葛藤でもあって、私もデミテルさんもどうすればいいのか分からなくなった。そんな感じで行き詰っていたのでした。デミテルさんはなんとか答えっぽい物を出したようですが、彼的にも、そして作品的にもこれでよかったのか悪かったのか。
　ホントに、なんでデミテルというキャラクターでこんな長々と書こうと思ったのかしらと思います。でも、なんか忘れられなかったんですよね。実にかわいそうな奴だなぁ。操られて師匠を殺して、その娘に復讐される。使用人だったということは、生活面でもずっとその娘と交流していたはず。リアは、復讐を果たしたときどんな思いだったのか。仇を討ててただ純粋に嬉しかったのだろうか。もしも、デミテルが生きていて、洗脳が解けたら彼はどんな思いに駆られるのか。色々考えてしまうのです。デミテルさんが好きな人は、みんなこんな思いに駆られてるんじゃないかなあと思います。
　などとかっこいい事書いてますが、肝心の本篇の８割ぐらいはデミテルさんにアホなことさせて酷い目に遭わしているという。ほんとごめんねデミテルさん。

長々と語ってしました。では、次回またお会いしましょう。今回は読みやすいはず…多分…