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導師の意思

イオンが、死んだ。
それは、ザレッホ火山で起こった出来事だった。
そして今は、イオンの預言を道標に、ベルケンドへ向かう途中。
アルビオールの中で、ルークがティアに向かって、言った。
「アニス………さすがに辛いだろうな。さっきからずっと塞ぎこみっぱだぜ」
「そうね………御両親を人質に取られていたとはいえ、アニスは、自分のせいで導師が死んでしまったと、考えているわ」
ティアから帰ってきた返事に、ルークではなく、ジェイドが頷いた。
「そうでしょうねぇ………イオン様が死んだのは、いくらモースが悪いとはいえ、アニスがまったく悪くない、というわけではありません」
ジェイドは、出来るだけアニスに聞こえないように言った。
「アニスは自分の責任を理解しているからこそ、塞ぎこんでいるのでしょう。まぁ、あれでは責任を感じすぎだと思いますが」
「俺達で何とか………」
「それは駄目ですね」
ルークが言い掛けた言葉は、最後まで言い終わらないうちに、ジェイドに遮られた。
何で、と言う顔をしているルークに向かい、ジェイドは言葉を続ける。
「アニスの事は、アニスが決着をつけるしかありませんから。あなただってそうでしょう?アグゼリュスを消したのは、あなた自身が決着をつけるしかありません。それと同じですよ」
ジェイドが言い終わると、ルークは納得した表情で頷く。
そして、傍にいたナタリアが、話に入ってくる。
「でも、何か出来ないものでしょうか。アニスの気を楽にさせるくらいは、してあげたいですわ………」
ガイが、ナタリアの言葉に頷き、口を開いた。
「そうだなぁ………ルーク、この下は、結構空気の綺麗な場所だったと思うから、そこに着陸して風を浴びる………ってのは、どうだ?」
ガイの提案に、ジェイドも頷く。
「それならいいでしょう。すみません、ノエル。少し、下ろしてもらえますか?」
ノエルは、はい、と言い、アルビオールを降下させた。
それに気付いたアニスが、ルーク達に近づいた。
「なになに?何でアルビオールを降下させるの?」
アニスの問いに、ジェイドが答えた。
「いやぁ、少し疲れてしまいまして。風を少し浴びようと思っただけですよ」
「大佐………私も、少し浴びてきていいですか?」
「どうぞどうぞ、お好きにしてください」
しばらくして、アルビオールの降下が完全に終了すると、アニスは外に駆け出した。
ルークたちも、ゆっくりと外に出る。
アニスは、草が沢山生えている場所で止まり、空を見上げた。心地よい風が肌をうつ。
「イオン様………」
空を見たまま、そう呟いた。返事は、返ってこないと解っていたが。
そして、アニスの頭の中に、イオンがレプリカだと解った時、イオンと約束を交わした時の事が浮かぶ。

「イオン様………レプリカなんですよね?」
「はい………すいません、アニス。今まで黙っていて」
そう返事した導師に、アニスは、言葉を繋げた。
「それはいいですけど………じゃあ、イオン様が惑星預言とか読んだら、どうなるんですか?」
「多分、体の弱い僕は、負荷が強すぎて音素の乖離によって消滅するでしょうね」
「じゃあ、モース様とかに無理やり読まされちゃったら………」
どうするんですか、とアニスは言葉を続けようとするが、それはイオンによって遮られた。
「その時は、アニスが助けに来てくれるんですよね」
笑顔でそういったイオンに、アニスは一瞬、戸惑いながらも、次には、笑顔を浮かべ、言った。
「はい!任せてください、イオン様!」
「約束ですよ、アニス」



イオンと交わしたその約束。
アニスは、その約束を思い出し、もの凄い後悔に襲われた。
「私………馬鹿だ。イオン様の約束……私が………破ったんだ。イオン様……私のせいで……」
アニスの目から、涙がこぼれる。このまま泣いてしまいたい。だけど、泣かない。大佐達がいるから、目の前で弱さをさらけるような事は、したくない。
涙を、これ以上出さないように、懸命に手で拭く。白い手袋が水にぬれる。
ふと、アニスの肩に、一つ、手が置かれた。
誰かと思い、アニスは振り返った。
「ティア………」
「どうしたの、アニス?」
アニスの肩に手を置いた人物は、ティアだった。
ティアは、優しい表情で聞いた。アニスは、それに強がって答える。
「べ、別に何でもなーい!大丈夫だから!」
ティアは、それが強がりだと解ったのか、優しく微笑むと、言った。
「導師が死んでしまったのが自分のせい、と考えているなら、導師が最後に残した言葉を、思い出してみるといいわ」
そうと呟き、ティアはアニスに背を向けて去っていった。
「イオン様の、言葉……?」
アニスは、また空を見上げた。
そして、頭の中に、ザレッホ火山の出来事が浮かぶ。


「ごめんなさい……イオン様!私………私………」
もう、監視しなくていい。そう言った導師に、アニスは謝るしか出来なかった。
イオンは微笑むと、また、アニスに向かい、言葉を紡いだ。
「今まで………ありがとう……僕の一番……大切な………」
      「ともだ………ち……」


「イオン様………」
アニスは空を見上げて、もう一度呟く。
導師は、自分の事を友達、と言ってくれた。
ならば、それを信じようと思う。自分は、導師守護役なのだから。
       預言は、数ある未来の選択肢。
それが、導師の意思。ならば、自分はそれを継ごう。
導師が信じた未来を実現させるために、頑張ろう。
アニスは、もう一度空を見上げ、呟く。
「……見ててくださいね。イオン様」
「アニスーーー!そろそろ行くぞーーー!」
そう、後ろから声が聞こえ、アニスは振り返った。
全員が、アルビオールに乗り込んでいるのが見える。
「あ!ちょっと待ってよーーー!」
アニスはそう声をあげ、走り出す。

導師の意思を継ごう。それが、私に出来る唯一の償い。
導師が信じた未来を実現させるために、私は戦う。それが、イオン様の意思だから。


  今日も、空の上で、イオン様が見守ってくれているから。




~あとがき~
初投稿、どうだったでしょうか?
自分なりに頑張ったんですが………
イオン様とアニスの約束の場面。あれはゲーム上ではありません。
こういう場面があったら素敵だなーと思って、入れました。
それと、イオン様の「ともだ………ち」という台詞も、ありません。
ただ、こういうことを言いたかったのだろうなと思いまして。
これを、誰か一人でも読んでくださったら幸いです。
これからも少し投稿しようと思うので。
それでは。

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