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平和な朝




平和な朝  

作:TKX



ガッ…キイィィン…ザッ…

交差する剣。

荒れる息。

流れ落ちる汗。

そして…飛び散る血。

―ズバアァァッ―

冷たく鋭い刃が、僕の肉を切り裂いた。

噴水のように吹き出す血。気が狂いそうな激痛。

がくり、と僕は地面に膝を落とした。

負けた。

僕は負けた。

僕は顔を上げた。

何人かの人間が僕を見下ろしていた。

彼らは悲しみと哀れみの混じった目を、僕に向けている。

ゴゴゴゴゴ…

次の瞬間、地面が揺れた。

彼らは焦ったような表情で辺りを見まわした。

僕は彼らに何か言葉を発した。意識がもうろうとしていて、自分でも何を言っているか分からない。

ドシュゥ…

壁が割れて、水が噴き出した。水は至る所から噴出し、やがて僕を飲み込んだ。

荒れ狂う川のような勢いの水は、あっという間に僕をひっくり返し、恐ろしい速さで僕を運んでいった。

向こうで誰かが叫んでいる……名前…僕の名前を……呼んで……

そして目の前が真っ暗になった。

やっと思い出せた。そうか、ここは……



気がついたとき、僕は木に寄りかかって座っていた。両手を顔にやり、そこにある物体をつかんだ。

…仮面だ。僕がこれをつけるようになってから、だいぶ時間がたつ…

僕は仮面を外した。目の端から頬を流れていくものがあった。

僕はそれを袖で拭う。

そして

「夢…か。」

自分にも聞こえないような小声で、呟いた。

上を向くと、爽やかな青空が広がっていた。僕には何故かあの男…スタンの顔がそこに浮んでいるような気がした。

「お~い!!」

ガサガサ、と一つの影が草を掻き分けてこちらへ向ってきた。

僕は慌てて仮面をつけた。

「朝ご飯ができたよ。ジューダスも早くおいでよ!」

ザッ、と顔を出したのは金髪の少し幼い印象を受ける少年、カイルだった。

「…ああ、今行くさ。」

僕は

(ジューダス…今はそう名乗っているな…)

と、頭の中で呟きながら答えた。

「カイル…」

立ち上がりながら、僕は引き返そうとしている少年を呼びとめた。

「何?」

カイルが振りかえる。その瞳はまっすぐに僕を見つめていた。

僕は何故か視線を合わせることができず、うつむいた。

「いや…なんでもない。」

「…ジューダス変だよ?大丈夫?」

「ああ、心配ない。気にするな…」



「おせえぞ、ジューダス!」

「もう準備できてるわよ。」

川の側、そこには銀髪で長身の男と、おかっぱ頭の小柄な少女が僕を待っていた。

…ロニとリアラだ。

僕達は焚き火を囲むようにして座った。

「今日の朝飯はカルシゥムバッチリ焼き魚!!俺ががんばって釣ったんだぜ~!!」

ロニが自慢げに言う。

「でも釣り竿作ったのは俺だよ?」

「餌を付けたのは私だわ。」

カイルとリアラが突っ込む。

「うるせえ!釣ったのは俺なんだから俺が偉いんだ!!」

僕を含める4人の間に笑いが起こった。こいつ等は見てると危なっかしくて大馬鹿者ぞろいだが、そのサマはなかなか僕を楽しませてくれる。

はっ、と我に返ると、僕は慣れない気持ちになっていることに気がついた。

…かつて信じる友と旅をしていたときと同じ気持ちに。

―…僕は…僕は幸せになってはいけないんだ…この世に再び生を受けたのは、僕の犯してきた罪を償うためだというのに…

僕は再び生を受けたときから、このことをずっと考えていたはずなのに…罪滅ぼしをしたいはずだったのに…カイル達と出会ってからも、ずっと同じ気持ちでいたはずなのに…―

しかしここには、心の底から笑っている僕がいた。



笑いも一段落ついて落ちついた頃。

「お前達と…もう少しこうしていても良いか?」

と僕は言っていた。言ったのではない。自然に言葉が出てきた。

すると、3人がまた笑い出した。そして、

「なんだよジューダス、急に!」

「頭可笑しくなったかぁ?ってそんな仮面つけてる時点でもう普通じゃねぇけどよ!」

「ジューダス大丈夫?」

などと勝手な事を口々に言い出した。しかし僕は全く頭にこなかったし、それどころか自分でも笑い出してしまった。



―すまない…僕はもう少しコイツ達とこうしていたいんだ…―



青空に鳥の鳴き声響く、平和という言葉のふさわしい朝のことだった。



END





* **

あとがき

どうもです。小説投稿とか経験薄いのでかなーり緊張してます。

日本語間違ってるよなぁ…と思いつつもどう訂正すれば良いのかわからないためそのままの表現つかってる場面が多かったです。(国語勉強し直せ



というわけで(どういうわけだ)一言…

最初の場面はスタン達VSリオンのつもりです。



このヘッポコ小説を最後まで読んでくださいました方々、どうもありがとうございました!

(ていうかあとがきになってないし…)

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