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バルバトスの誕生


 バルバトスの誕生
                      作:ディウエセ



時は天地戦争が始まる少し前、バルバトス・ゲーティアがまだ14歳だった頃の話である。
ゲーティア一家は父・ドルガドス、母・ジョアンヌ、そしてひとり息子・バルバトスの三人家族だ。
家族構成だけを見ると、ごくごく普通の家庭に見える。
しかし、この家庭は普通の家庭などではなかった。
家族全員がおっかない顔をしているという、見た目に優しくない家庭だったのだ。
それだけではない。
問題はその中身だ。
これは、あのバルバトスが生まれるきっかけとなった日の出来事である・・・。



AM7:00
これがゲーティア家の平日の起床時間である。
父・ドルガドスは体躯に恵まれ、全身が筋肉の塊である。
そんな彼の職業は猟師である。
ただし、猟師といっても使う道具は銃などではない。
もっていくのは斧一本だ。
彼は愛用の斧一本で、あらゆる獣を狩ることができるのだ。
その彼が起床するのがちょうどこの時間なのだ。
母・ジョアンヌは彼より早起きというわけではない。
かといって、いつまでも寝ているわけでもない。
彼女も、大体ドルガドスと同じ時間に起きるのだ。
しかし、ひとり息子のバルバトスだけは違った。
彼はどちらにも似ず、寝起きが悪かった。
そんな彼を起こすのは、母・ジョアンヌの毎日の仕事なのだ。

「バル!起きなさい!!学校に遅れるわよ!!」
ジョアンヌの呼びかけに答えることなく、バルバトスは寝返りを打った。
「起きなさい!起ーきーろ!!」
やはり答えないバルバトス。それどころか、高いびきすらかいている。
その直後、ジョアンヌの顔つきが変わった。
彼女の中で、何かが音を立てて切れたのだ!
「いつまでも寝てんじゃねえ!」
ジョアンヌがそう叫んだ瞬間、バルバトスはその殺気を感じ取り、ベッドから飛び降りた。
間もなく、ベッドの下から漆黒の刃が飛び出し、さっきまで彼が寝ていた場所を貫いた。
ようやくバルバトスが起きると、ジョアンヌの表情はもとに戻った。
「やっと起きた?早く支度しないと学校に遅れるわよ。」
こうして、彼は毎朝命懸けで起きている、いや、起こされているのだ。


AM8:30
ジョアンヌは、外の倉庫にいた。
彼女の日課のうちの1つ、ベッドの修理のためだ。
そのためには、適度な大きさに切った木材が必要なのだ。
彼女は、丸太を目の前にすると、表情を鬼のように変え、手にしたおたまを振りかざし、
「真っ二つだ!」
そう叫んで、おたまを振り下ろした。
-次の瞬間。
丸太はきれいに二つに割れていた。
そしてその表情はいつものものに戻っていた。

彼女も夫同様、体躯に優れ、筋肉の鎧を纏っている。
それが成せる業なのか。
どの世界を探しても、おたまで物を切るという芸当ができるのは彼女以外いないだろう。


PM4:00
バルバトスが帰ってくるなり、
「バル!風呂の掃除やっといて!」
というジョアンヌの声が響いた。
しかし、バルバトスは表情一つ変えなかった。
それもそのはずである。
バルバトスが唯一手伝う家事が、この風呂掃除であった。
彼は愛用のデッキブラシで風呂を掃除する。
「湯あかだと?貧弱すぎるわ!」
彼はそういいながら、慣れた手つきで風呂掃除を進めていく。
見る見るうちに風呂場がきれいになっていく。
掃除が終わるかと思った、まさにその時、背後から、黒球が現れた。
その黒球から現れたのは、母親のジョアンヌであった。
しかし、彼女は右手におたまを、左手に紙を持っていた。
そして、その表情からは、明らかに殺意が感じ取られた。
(やばい!あの紙は!!)
バルバトスがそう思っても、既に遅かった。
その紙には、
「歴史テスト バルバトス 12点」
と書いてあった。
本当は、帰ってくるなり焼却処分しようと思っていたのである。
しかし、その前にジョアンヌに見つかってしまったのだ。
「バル!表に出ろ!」
ここで逆らってはまずいと考え、バルバトスはしぶしぶ外に出ることにした。

外に出て早々、ジョアンヌの怒りが爆発した。
「成績の軟弱な者は消え失せろ!」
彼女がそう叫んだ瞬間、バルバトスの足元から闇の空間が覗いた。
そこから強大な力が溢れてくる。
バルバトスはそれを飛び越え、ジョアンヌのほうに駆け寄った。
間もなく、もといた場所の後方の上空からも同様の力が溢れ、
最後にエネルギーの凝集体が太い閃光となって降り注いだ。
だが、間合いを詰めたバルバトスに対し、ジョアンヌの一撃が襲う。
「轟炎斬!」
炎を纏ったおたまが、上段から振り下ろされる。
バルバトスは手にしていた愛用のデッキブラシでそれを受け止めた。
非常に重い一撃だったが、彼も年齢に見合わない筋肉に包まれており、何とか受け止めることができた。
しかし、次の瞬間、
「斬空断!」
振り上げたおたまによる一撃は、バルバトスの体を軽々と上空へ運ぶ。
しかし、この攻撃もバルバトスはデッキブラシによって直撃をまぬがれていた。
バルバトスの体が地面へと近づいていく。
しかし、着地を待たず、ジョアンヌの追撃がバルバトスを襲う。
「裂砕断!」
再び上段から繰り出される攻撃に対し、
バルバトスは、デッキブラシを地面にたたきつけることでこの攻撃をも回避し、間合いを広げた。
ジョアンヌのおたまによる攻撃は、地面を砕き、無数の石片を舞い上がらせた。

バルバトスがこの連続攻撃を全てさばくことができたのは、この技が初見ではなかったからである。
実は、ジョアンヌはドルガドスとの夫婦喧嘩の際、よくこの連続攻撃を使っていたのである。
バルバトスは、その様子を見て、実際にさばいてみせたのだ。
かなりの格闘センスがなければ成し得ないことは言うまでもないだろう。

ゲーティア家に代々伝わる「奥義・三連殺」を全てさばき、
バルバトスが反撃するか否かを考えた、その刹那、
「冥獄斬!」
おたまに纏った闇の力が巨大な斧の形をなし、それによる横薙ぎ攻撃がバルバトスを襲う。
攻撃範囲は三連殺のいずれの技よりも広かったが、
バルバトスはバックステップによってこの一撃からも逃れることができた。
-だが、間髪いれず、
「微塵に砕けろ!秘奥義、ジェノサイドブレーバー!」
ジョアンヌがそう叫び、おたまを振り上げた瞬間、エネルギーの奔流が、バルバトスを襲う。
バルバトスはバックステップの着地寸前であり、この攻撃をかわせる体勢ではなかった。
エネルギーの塊がバルバトスに触れると、彼は十数メートルは吹っ飛ばされた。
もちろん、攻撃を喰らったところもただでは済まなかった。
肉が焼け焦げ、普通の人間だったら致命傷だ。
「これぞわが秘奥義、五連殺だ!」
ジョアンヌがそう叫んでいるところに、ドルガドスがやってきた。
先ほどの轟音を聞きつけて急いで戻ってきたのであろう、その額には汗がにじんでいる。
「バル!平気か!?」
しかし、バルバトスにはドルガドスの呼びかけに返事をするだけの力が残っていなかった。
このままではまずいと思い、ドルガトスはバルバトスを持ち上げて家に戻ろうとした。
-しかし、
「男に後退の二文字はねえ!」
ジョアンヌがそう叫ぶと、間もなく上空から巨大な岩が降り注いだ。
それらは容赦無く彼らを押し潰した。

薄れ行く意識の中で、バルバトスは、
(オレも大人になったら、こんな理不尽な大人になってやる!)
そう思った。



バルバトスが完全に回復するまでには相当な時間がかかった。
この間も、ジョアンヌのシャドウエッジを毎日かわしていた。
バルバトスが回復し、学校に行ったその日、その学校は壊滅した。
それは、あのバルバトスが本当の意味で生まれたということを意味するものであった・・・。



あとがき

穴埋めゲームが発端となり、この小説が生まれたのですが、
小説を書いたことが無く、またほとんど読んだことも無かったために、
しょうもない出来になってしまいました。
特に戦闘部分では、結城聖さんのD2の小説を参考に、というよりそのまんまになってしまい、
結城さんのファンの方、また(これを読んでいるとは思いませんが)本人には本当に申し訳ないと思っています。
話のつながりも微妙ですし・・・。
反省ばかりになってしまいましたが、少しは楽しめました。
次回作は・・・無いでしょう(苦笑)

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