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癒えない傷


  

 癒えない傷



  作者  春乃





目の前で起きていること、そしてそれが自分のせいで起こってしまったという現実。



 それが信じられない。



 いつも笑いの絶えない村で、楽しそうな笑い声が聞こえてきて。



 そんな大切な人たちが、まるでドミノを倒すように息絶えていく。



 見ていることしかできない私。



 恐怖と罪悪感に押しつぶされそうで、熱いものが喉に溜まってきて、息をすることができない。不安と絶望が溢れ出てくる。―――苦しい。



 遠くで、ダークグリーンが揺れた。それは自分と同じ髪の色のはずで、けれど赤く汚れていた。視界がぼやけて滲んで見える。



 『おとうさん』



 声にはならず、唇だけが虚しく動く。



私が一番よく知ってて、大好きで、愛しくて。その笑顔を見ると嬉しくなって。



 でも今はもう、面影すら残っていなくて・・・・・。



 ぬくもりが懐かしくなって、そっと手を伸ばした。しかし近くに見えたその姿は、自分の腕の長さでは届かない距離にあった。小さな手が虚し
く宙を掴む。







     どうして?







 それはやっぱり言葉にはならなくて、唇の上から涙が伝う。







     私はこんなつもりじゃなかったのに









      ただ、星のカケラが欲しかっただけで







   大好きな人たちを傷つける気なんか、これっぽっちもなかった









ドサッと鈍い音がして、燃える赤毛の―――幼馴染みの父親と、変わり果てた自分の父が倒れた。

  全焼は免れた。けれど何も残ってはいない。



  楽しそうな人々の姿。何処からか聞こえる笑い声。



  それは過ぎ去った思い出。



  つい数時間前のことなのに、もう戻ることはできない。





―――私のせい私のせい私のせい・・・・・



  それだけが私の頭の中で連呼された。







「―――ラ。ファラッ!」

「!」



   ドサッ



 前を見ていなかったせいか、足元に小石につまづいて転んだ。



 ふと顔を上げると、見慣れた赤毛の青年が呆れた様子で立っている。



「・・・・・はあ。格闘家が石につまづくなよ」



 ブツブツ言いながらもさりげなく手を差し伸べてくれる。彼の手を借りて立ち上がり、スカートの埃を払った。



「ごめんごめん。なんかボーっとしちゃった」

「おまけに暗い顔してたぜ?」

「そう? 私そんな顔してた?」



 反射的に作り笑いを浮かべる。



 けれど彼はにこりともせず、ただ小さく溜息をついた。踵を返しかけて、呟くように言った。



「―――なぁファラ」

「なあに?」

「一人で頑張らなくていいからさ」



  逆光で見えない横顔。その背中はいつもより大人びて見えて。



「ファラがそんな顔してると、不自然すぎて逆に怖えーよ」

「な・・・・何ですって!?」

「一人じゃないからな」

 

彼はくるっと踵を返して、前を歩く二人を追いかけて行った。

 

最後に何か呟いたような気がした・・・けど、きっと気のせいだよね。



「ファラー! 町が見えてきたよぅ!」



 ライトパープルの人が振り返って、手を振った。その隣で、今にも倒れそうに青い顔をした青年が杖を頼りに私に言う。



「ぼ・・・僕より後ろを歩くなんて、何やってんだよ」

「おーい! 遅れるなよ、ファラ」



 浮かべられている自然な笑顔を見て、どこかホッとした。



 私らしくなかったかな、なんて思ってみたりして。



「今行くー!」



 温かい仲間のトコロヘ、私は走っていった。





  おろかな罪を犯した私に舞い降りた奇跡。

  

  もしこれが神様の下さった最高のプレゼントなのだとしたら、



  私はこの奇跡的で幸せなときを精一杯生きよう。



                     ・・・・・・仲間と一緒に。





         ☆あとがき☆  



   今日は(今晩はかな?)春乃です。

 

   今回はなんかシリアス(?)っていうか、ファラの過去を書いてみたんですけど・・・分かったでしょうか?

 

   とにかく、ファラの心の中ってどんなんだろう~って思って、自分なりに書いてみました。



   感動するものってどうしたら書けるんでしょう? 勉強あるのみでしょうかね:: どなたか教えてください。

 

   アドバイスや感想など頂けたら嬉しいです。余程物好きな方(?)や超お暇(?)な方はお願いします。



   乱文駄文失礼しました。ではでは、またお会いできるといいですね::

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