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見守る眼差し


見守る眼差し

                        作者  春乃











 望まれて生まれてきたわけじゃねえのは分かってるけどよ。

 まぁ、俺にも捨てきれないものってあるからさ。

 それ以上は望まねぇから、とりあえず俺がここにいるってことだけは認めてくれよな。







 呪われた過去。ふと空を見て一人思い出すのはいつもあの日だった。



 実の母親に言われた衝撃的な言葉。今も心に深い傷として残り、忘れようとしても記憶から消し去ることのできない母の呪い。



 挙句、妹にまで恨まれる始末。生きているのが嫌になるほどいい思い出というものがない。



 草むらに腰を下ろし、小さく溜息をつく。俺の心の中とは裏腹に、皮肉にも空はあんなに晴れてやがる。まるで嘲笑っているみたいで無性に腹
が立つ。



「・・・・っと、俺様って仕方のねえ奴・・・・・」



 もし自分を好きだと言いきれる奴がいたら、そいつはきっと親の仇でさえも簡単に許せてしまうような心の広くて大らかな奴なんだと思う。俺
にしてみれば嫌味ったらしくて仕方がない。尤も、そんな奴世界中探したっていないだろうが。まぁ、何より我が身が惜しいという奴ならメルト
キオにゴロゴロいるけどよ。ついこの前まで自分もその中にいたのだと思うと、胸糞が悪くなる。





 風が吹き、雲の流れがいつもより速くなる。俺の悩みも過去も一緒に運んでってくれりゃあいいのに、なんて都合のいいことを考えてみたりす
る。どうしたってこの傷は塞がってくれはしないって知ってても、それからもがいて苦痛から逃げようとする。我ながら情けなくて涙が出そう
だ。



 町のほうから吹いてくる風が、俺の紅い髪を乱して山の方へと流れていく。風と一緒に流れてくる匂い―――それが今日の晩御飯だということ
が一瞬でわかった。メニューまでしっかり分かる。カレーライスだ。



 旅に加わったばかりの時は、得体の知れない奴らが作る食事なんか嫌だっつって食べようとしなかったクセに、今ではすっかり慣れてしまった
上、その食事を楽しみにまでしてしまっている。

 柔軟なのか虫が良いのか分かりゃしない。



一つだけ確かなのは、俺がいつの間にかここを気に入ってしまったということ。



 まぁ、ぎゃあぎゃあうるせえ凶暴女も混じってるけどよ、そういうのも全部含めて俺は気に入っているんだと思う。俺の存在を認め―――全て
とまではいかねえけどよ――――受け入れてくれる。





 ・・・それでも、いつかは裏切っちまうんだろうな俺は。本当にどうしようもねえ奴だからよ。



 でもな、マジで嬉しかったんだぜ?俺を仲間だと認め、必要なんだと言ってくれたお前の言葉がよ。



 生まれて初めて存在意義を感じたと思った。お前が必要としているから俺はここにいるんだってな。まぁ、お前が俺を必要とする限り、俺も頑
張って生き続けることにするよ。



 どんな形になっても・・・・な。



 お前を苦しめるようなことになっても、俺を恨んだりするなよ?全部俺を信じたお前が悪いんだからな。





       でも





     一緒に旅を続ける間だけは











     お前を見守ってたっていいだろ?











    その背中を任せてくれたっていいだろ?









     お前には本当に感謝してるんだからよ、ロイド。

















     これがどうしようもねえ俺様にできる、











お前への唯一の償いだと思うからさ













          ロイド



















         ありがとな・・・・







   



          ☆あとがき☆



   未熟な私の作品をここまで読んで下さりありがとうございます。



   水無月春乃、この上ない喜びに(?)満ち溢れておりますです。



   やっぱりテイルズの中で一番複雑なキャラだけに、心境を書くのが難しいですね::



   まぁ、私なりに精一杯書いてみたつもりです。いかがでしたでしょうか?



   感想やアドバイスなど頂けたら、喜びで踊り狂うかもしれません。(何



   これからも私の作品を宜しくお願いします。





   乱文失礼いたしました。それではこれで~ww

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