ボクのスキなモノ
ボクはイセリア村の記憶しかない。
でも、旅に出るちょっと前、姉さんに聞いたことがある。
ボク、どんな子だったか、って。
姉さんは、少し苦い顔で答えた。
「あなたは…本当に人間が嫌いだったわ。」
よく意味が分からなかった。
いまでも、嫌いなのに、過去形になってた。
でも、イセリア村に戻ってきたとき、なんとなく思い出した。
僕が、イセリア村に来る前の事を…。
「あなただあれ?」
イセリアに来る前の村には学校がなくて、名前を聞かれたら
「…ジーニアス」
怒ったような口調で答えていた。
そうすると、姉さんが来て、謝ってた様な気がする。
「ごめんなさい、この子貴方が嫌いなわけじゃないのよ。」
って。
イセリアに来ても、それが変わることはなくて…。
学校でも、いつも1人だった。
でも…
「なぁ、勉強を教えてくれよ。」
そういってきたのがロイドだった。
「…あんた誰?」
そう言うと、にやっとして意地悪そうな顔をした。
「人に名前を尋ねるときは、まず自分を名乗るんだぜ?ジーニアス。」
「…もう名前分かってるじゃん。名乗る必要なんてないよ。」
いっつもそんな感じで終わった。他の子達は離れていった。
でも、ロイドは違った。
「そっか。俺はロイド。ロイドアーウィングだ。よろしくなジーニアス。」
その時は、なんだかいつものロイドじゃなくて。
優しい目をしていた。
「姉さん。何で人間が嫌いだった。って過去形にしたの?」
言い間違いじゃないのかと思った。だから聞いてみた。
「あら、理由を聞く必要があるのかしら?てっきり私は…もう分かっているものだと思ったけれど。」
「?」
ボクは意味が分からなかった。
「あなたは、人間を嫌いなのではないと思ったのよ。ロイドは人間よ?コレットも…ここにいる皆も。」
そういえば、と思った。
何故ボクは人間達と旅をしているのだろう。
「あなたは、人間を嫌いなのではなく、一人一人を見て、嫌いか好きかを判断しているようになったのよ。」
「??」
「ハーフエルフだから嫌いだとか…種族で決めない。今の貴方はそうでなくて?」
周りを見渡した。
確かに回りは人間。
けれど、そこには嫌いなんて一文字もない。
…ここにいるのは大切な友達、仲間たちだ。
皆、誰一人欠けたら駄目な人達だ。
「おい!ジーニアス、はやくしろよ~」
「うん!」
ボクのダイスキで、大切なモノ。